新しい循環器、中枢系リンパ管

医学・科学は目覚しい進歩をとげ、人々は人間の体について隅々まで研究・調査し、もう知らないことなどないと思われていた。

だが2015年、米バージニア大学医学部の研究チームは、まったく新しい人間の体内組織を発見したと発表し、医学・科学界に非常に大きな衝撃を与えている。

新しい循環器、中枢系リンパ管

実際に見たり触れたりすることはできないが、「中枢系リンパ管」と名づけられたこの新しい循環器は、から余分・不要なリンパ液を廃液する役目を担っており、神経疾患や免疫性をより良く知る上で重要な組織だ。

米バージニア大学医学部の研究チームを率いるAntoine Louveau氏が、繊細な細胞を傷つけることなくマウスの髄膜(脳を覆う軟膜)をスライドにのせる方法を考案したが、その方法を用いて研究を行っていたところ、同研究チームが中枢系リンパ管を発見した。

研究チームは驚いた。なんと人間の脳検体からも同じリンパ管が発見されたのだ。

ユニコーンに偶然出くわすことに値するほどの大発見

これまで、リンパ系組織は脳内には存在しないものとされてきており、今回の大発見は科学界では万に一つもない想定外の大発見であった。

この組織自体がこれまでに発見されていなかったことはもちろん、その存在は教本上では「ありえないこと」として取り上げられていたのだ。

では、この中枢系リンパ管がこれまで見落とされてきた理由とは?ずばり、中枢系リンパ管は深層部に存在するからである。

脳の内部および外部血管から血液を廃液する硬膜静脈洞内に中枢系リンパ管がある。また、主要血管付近にあるため、それら血管の影に潜んでいたというわけだ。医学・科学界における偉大な発見だということに変わりはないが、さらなる研究と調査が必要だと同研究チームは述べている。

ただ、多くの人々を悩ませてきた多発性硬化症や、アルツハイマー病、そして自閉症などといった難解な疾患の数々を理解し学んでいく上で今回の発見=中枢系リンパ管の存在が大きな役割を果たしてくれるのは確かだ。

高齢化が進みアルツハイマー病を患う患者数が増え、また人々が自閉症についての理解を深め早い段階で認識することができるようになってきたことから自閉症患者数も増加しており、患者の家族らはこれらの病気にどのように向き合っていけば良いのか日々悩んでいることだろう。

患者のためにも、患者の家族のためにも、今回の歴史を揺るがす大発見が今後またさらなる発見へとつながることを期待したい。